沖永良部島の農業法人「大豊」(和泊町)が水を張らない「節水型乾田直播(かんでんちょくはん)」による稲作に挑戦し、7月22日、約20ヘクタールの畑で初めての稲刈りを迎えた。田んぼでしか米は作れないという常識を覆す挑戦が、沖永良部島で実を結んだ。
今回の取り組みは、ジャガイモとの二毛作を目指して始めた。昨年7月、畑でも米が栽培できることを知った大山茂豊社長は「これなら島でもできる」と可能性を感じ、鹿児島で栽培技術を学んだ。ジャガイモの収穫を終えた2月下旬、ドローンで種もみをまき、一度も水を張ることなく約4カ月で収穫を迎えた。
節水型乾田直播は、水を張らない乾いた畑に直接種もみをまく稲作技術。水田栽培と比べ、生産コストを約3分の1に抑えられるほか、CO2排出量の削減やジャンボタニシによる食害がないこと、本土で課題となるシカやイノシシ、鳥による被害が沖永良部島では見られなかったことなどが利点だという。ジャガイモ収穫後すぐに栽培を始められるため、除草作業の負担軽減にもつながる。
収穫した米は8月から販売を予定しており、商品名は、島内公募で80件以上寄せられた案の中から、島の方言で「ありがとう」を意味する「みへでぃろ米」に決定した。収穫後の畑には稲の残渣(ざんさ)が残るため、米ぬかやもみ殻を新たに購入する必要が減り、次作のジャガイモや花の栽培にも生かせるという。8月に畑作りを始め、10月にはジャガイモの植え付けを予定している。
収穫した米を試食した大山社長は「かめばかむほど甘みが出て、おいしかった」と初収穫の手応えを語った。「島民が食べる米は島で作れるようにしたい。チャレンジには恐怖もあるが、それ以上に楽しみしかない。農業でどんどん新しいことに挑戦し、100年後も島に受け継がれるものを作っていきたい」と、新たな挑戦への思いを話す。