沖永良部島のジャガイモの収穫を終えた広大な畑に咲き誇るヒマワリが今年も、島民や観光客の目を楽しませている。
手がけるのは、同島でジャガイモ専門の大規模農業を展開する皆村農園。幹線道路沿いを黄色く染める大輪のヒマワリは、今や島の初夏を告げる風物詩になっている。社長の皆村正樹さんは、通常の緑肥とは異なる手間とコスト高をあえて引き受け、7年前からこの風景を創り続けてきた。
同園は40ヘクタールを超える農地でジャガイモ栽培に特化する農家。通常、春の収穫を終えた畑には、土壌を豊かにするための緑肥としてソルゴーなどの非開花植物を植えるのが一般的が、皆村さんは、あえてヒマワリの種をまく。
その背景には、島の子どもたちへの深い愛情がある。沖永良部島で暮らす若者の多くは、高校卒業を機に進学や就職で一度は島外へと旅立っていく。皆村さん自身は、高校卒業後に島を離れることなく、背中を見て育った父親の農業をそのまま受け継ぐ道を選んだ。島に残ったからこそ、島を去っていく世代の気持ちにも寄り添える。
皆村さんは「子どもたちが島を離れても、この美しいヒマワリの風景が胸に刻まれていれば、いつでも故郷を思い出せる。その記憶が愛郷心を育み、いつかまた島へ戻ってくるきっかけになってくれれば」と期待を込める。
ヒマワリの景観栽培は決して容易ではない。資材費や手間の面を考慮すると、通常の緑肥を植える場合に比べて経費は約10倍にもなる。さらに、種まきの時期が梅雨入りと重なるため、天候を見極めるタイミングの難しさも常につきまとう。
それでも挑戦を続けるのは、「畑に集まる人々の笑顔があるから」と皆村さん。近年はSNSでの発信をきっかけに活動の輪がさらに拡大。地元の小学校区の子どもたちのツアーや、観光客の呼び込みにも一役買っている。
普段の農閑期には車が止まることのない畑のほとりだが、ヒマワリが満開を迎えるこの時期だけは、大型バスやレンタカー、ファミリーカーが次々と吸い寄せられるように停車する。皆村さんが7年前にまいた一粒の種は、今や島民と観光客を笑顔で結び、沖永良部島の経済とコミュニティーを明るく彩る風景になっている。