「100年後に残す」を理念に、世界的に珍しい隆起サンゴ礁でできた喜界島を拠点に海洋生物、地質調査を行う「喜界島サンゴ礁科学研究所」が3月26日~30日、次世代のグローバル人材育成のためのフィールドワークを徳之島と沖永良部で行った。
今回のフィールドワークの目的は、本物の自然の中で第一線の研究者と共に調査研究を実践し、自然の多様性や科学と社会の繋がりを学ぶことで、2021年度から科学技術振興機構(JST)のジュニアドクター育成塾に採択されている。これまでの連続するサンゴ塾のプログラムの一環として、サンゴ塾で身につけた思考力や問題解決能力を元に、巡検型のフィールドワークで「新たな課題を発見する力」を伸ばし、感性とコミュニケーション能力を高めることを目指している。
参加者は、北は北海道、南は徳之島から応募があった小中学生5人とその保護者で、主に徳之島伊仙町の喜念浜、義名山(ぎなやま)の森、阿権(あごん)集落、ミヤトバル海岸、沖永良部島知名町の昇竜洞や地下ダムなどを専門家と地元ガイドと共に巡り、自らの発見、疑問、これから掘り下げていきたいことなどを大人の前で発表した。
阿権集落のサンゴで作られた石垣を見て、北海道から参加した都筑暖和(つづくのな)さん(中学3年)は「石敢當にはハマサンゴが使われていて魔よけの意味があると聞いたが、他の地区でもハマサンゴが使われているのか、その利用に意味があるのかを知りたい」と話す。義名山の森、喜念浜の探索後、広島県から参加した山口結雅さん(中学1年)は「サンゴの違い、細かい地形などの異なる条件によって、そこにしか生きられない生物がいるのかを知りたい」と思いをはせた。茨城県から参加した古谷怜生さん(中学1年)は「義名山の森にあった水神様を見て、他の鍾乳洞で水神様を祭っていない所があるなら、その違いがどこから来るのかを知りたい」と興味を示す。
同研究所の渡邊剛理事長は「大切なのは感じる、見つける、伝える、そして残すこと。その場にいた人が感じて見つけたことは誰も否定できない。答えを導き出すことが大事なのではなく、疑問を持ち続ける気持ちを大切にしてほしい」と締めくくった。