伊仙町教育委員会社会教育課が企画し、夏季休業期間を通じて実施された「足元を見つめシマを知るプロジェクト」の作品が現在、徳之島交流ひろば「ほーらい館」(伊仙町伊仙)で展示されており、多くの利用者が足を止めて子どもたちの感性に触れている。
小中学生は祖父母など身近な高齢者へ聞き取りを行い、島の過去の暮らしや文化、歴史を再発見しており、将来的には子どもたちの郷土への愛着と誇りを育んでいくことを目的としている。
同会場には、伊仙町内の小中学生が聞き取り清書した絵日記や、内容をまとめたリポートがずらりと並び、それを読んだ大人が「そこから学ぶ」という現象も起きている。島の歴史の中でも、特に目立つのは戦中・戦後の厳しさで、戦時下とそれに続く米軍政権下では食べ物がほとんどなく、芋や雑穀、雑草などを食べて生活していたこと、時には1日2食しか食べられなかったという事実を書き記している。米軍によるB-29の空襲が度々あり、人々が夜中に音を立てないようにおびえながら生活し、爆弾から逃れるために山や壕(ごう)に身を隠していたという体験談も記録されている。ある生徒は、空襲によって学校が燃えてしまった話や、米軍が爆撃した飛行場(滑走路)の整備作業に、夜中に駆り出された経験を聞き取って表現していた。
牛と牛が力強くぶつかり合う勇壮な戦いとして、何千人もの聴衆を集める徳之島の「闘牛」に関する記述も多い。約400年以上前から続く伝統文化であり、農作業後の楽しみとして農民によって始められたことが、中学生の聞き取り調査からも明らかになっている。テレビやゲームがなく娯楽が少なかった時代に、当時の子どもたちが自然にあるものを使って「竹やり」や「竹馬」などを手作りして外で元気に遊んでいたことが、絵日記から伝わってくる。
子どもたちのまとめや感想からは、現代の平和で便利な生活の尊さを再認識し、戦争のない世界を強く願う感想が寄せられており、戦争を二度と起こしてはならないという年長者の願いを、若い世代がしっかりと受け継いでいる様子がうかがえる。
伊仙町教育委員会は、今年で3年目となるこの取り組みを、毎年の夏季休業課題として小中学生向けに定着させ、いずれ島を離れる子どもたちに、故郷への敬意と学びを深める貴重な機会を提供していく予定。「足元を見つめシマを知るプロジェクト」は、徳之島の豊かな自然と文化、時代により困難を乗り越えてきた島の人々の強い絆と知恵を、未来へつなぐ架け橋となることが期待されている。