
沖永良部島で島産コーヒーを生産・加工・販売する「ノアコーヒー」(和泊町和泊)が2月6日~8日の3日間、農園見学を含む視察ツアーを行った。ツアーの主な参加者は、西日本のコーヒー焙煎(ばいせん)・販売業者ら29社から成る西日本コーヒー商工組合の組合員ら。
農園を運営するJUN建設取締役でノアコーヒー創業者の山下さつきさんは18年間にわたり試行錯誤を繰り返し、現在は年間生産量約1トンのコーヒー豆を生産する農園を案内。「コーヒーの木から実が採れるのは13年~15年目までといわれるが、この木は19年目に入った。机上論通りだと失敗もあり、何事もやってみないと分からない」「台風より先に本土から島に渡りコーヒーの木を養生した後、台風の目に入る時間を見計らって作業を再開したこともあった」など、これまでの実践や苦労を話し、参加者らから驚きの声が聞かれた。
京都市内でハワイアンコーヒー専門の焙煎所「Joys coffee Roastery」を経営する出倉直一(なおかず)さんは「大変な苦労をして育てていると分かった。店でハワイ産のコーヒーを出しているが、海外の人に自信を持って出せる日本産のコーヒーも扱えれば。沖永良部島のコーヒーが有名になってから扱うのと今扱うのでは思い入れが違う。来られてかった」と話す。
山下さんが霧島市内で経営するノアコーヒー本店の常連客で、応援に駆けつけた鹿児島県議会議員の平原志保さんは「コーヒーを栽培して観光PRにつなげる地域は増えているが、安定的に生産して、商品化までしているところは珍しい。コーヒーが鹿児島県を代表する農作物として認められるよう事業を進めてほしい」と期待を込める。
農園視察の後、山下さんはコーヒーの実から豆と果肉を分離させる脱穀機を披露。農園で参加者が収穫したコーヒーの実を脱穀しながら、コーヒーの果肉に含まれる栄養素と、特許を取得した果肉ごと焙煎する方法について説明。同島産のコーヒーを飲んだ参加者らからは「クリアな風味で日本人好み」「生産工程が見えているから安心感がある」などの声が聞かれた。
西日本コーヒー商工組合元専務理事の一美(いちみ)洋二郎さんは「コーヒーはコーヒーベルトと呼ばれる海外の産地でしか、いいものは作れないという定説があったが、山下さんの話を聞くとそうではないと分かり、私たちも勉強を続けないといけないと痛感した。コーヒーが好きでたまらない人なら、農園を見て驚くはず。組合としても応援していきたい」と期待を込める。
山下さんは「沖永良部島のコーヒー農園が業界の方々に納得していただける園に成長したことに、これまでの苦労を振り返って感慨深い。今回の視察を通して、生産量を増やす体制が急務だと分かったので、今後は島でコーヒー豆生産者を増やしていきたい」と意気込む。