徳之島町金見集落で7月21日、夏の伝統行事「漁(ぎゅう)なくさみ」が行われ、集落住民や島内関係者ら約60人のほか、鹿児島県本土より来島中の親子ら35人も参加し、約40世帯の小さな集落の公民館がにぎわいを見せた。
「なくさみ」とは「慰める」が語源の徳之島の方言で、農閑期に各集落で漁をして取った魚をみんなで食べ、ねぎらい合って疲れを癒やすという習わしから、同集落では毎年この時期に実施している。今年は台風の影響で海が荒れていたため追い込み漁は中止となったが、あらかじめ準備していた食材を集落の女性たちが中心となって調理し、海の幸・山の幸などが並ぶ中、参加者らは親睦を深めた。
今回初参加した「かごしま森のようちえん」(鹿児島市吉野町)を経営するNPO法人「かごしま子どもと自然研究所」ツアー統括の中原麻衣子さんは「初めは『集落』と聞くと少し入りづらいイメージもあったが、とにかく皆さんに温かく接していただきうれしかった。住民の方の子どもたちを見る目も優しく、とても心地いい空間になった」と振り返る。
子どもたちからは、参加のお礼として茶摘みの歌の合唱を披露したほか、手作りの写真立てを住民に贈った。住民からは「この集落でこんなに多くの子どもたちが笑っている光景が見られてうれしい」などの声も聞かれた。
毎年70人相当分の食材の仕入れを一人で行うという太良区長は「これまで30年以上行われてきた金見の漁なくさみで、島外のツアー客を受け入れるのは今回が初めて。天候などで予定が変更になったが、子どもたちも一緒に調理できたらもっと良かった」と話す。
帰りの船の時間に合わせて途中退席する子どもたちに、住民らは「来年もまたおいでよ。待ってるね」と手を振って別れを惜しんだ。
金見集落は徳之島町北部に位置し、集落全てが国立公園区域。国指定特別記念物のアマミノクロウサギをはじめとした豊かな生態系が観察できる。ソテツトンネルが有名な景勝地としてあるほか、徳之島のイノシシをつかったジビエ料理を提供するカフェや集落歩きのアクティビティーなど、人が行き交う活動を通じた集落の活性化に積極的に取り組んでいる。