沖永良部島で唯一の印刷会社「安田印刷(知名町瀬利覚)」の事業が継承され、6月1日、新体制で事業が始まった。
同社は1967(昭和42)年、安田佳成さんが創業。息子の安田佳郎さんは獣医師を志していたが、家業の借金を返すため1976(昭和51)年、2代目として引き継いだ。今年3月に健康上の理由から引退を決め知名町商工会に脱退届を提出したところ、同商工会青年部長の金城良太郎(かなき・りょうたろう)さんが名乗りを上げた。安田印刷はいったん解散し、金城さんが個人事業主として設備などを買い取る形で事業を承継した。
金城さんは「商店街にあり、立地もよく、閉めるデメリットが大きいと感じた。まずは会社を守ることが優先。フットワークを軽く、町のニーズに応えていきたい」と意気込む。
金城さんは同町の鉄工所の役員であり、以前から安田印刷とは取引があったという。「商工会のみんなで守っている感じで、町の人たちも気にかけてくれて、すごくうれしい。鉄工所の現場を任せている従業員も頑張ってくれている」と周囲のサポートについて話す。事業承継後もほぼ毎日、同社を訪れているという安田さんは「(継承は)うれしい。40年勤めたデザイナーが退職したこともあるので、1~2年は大変だろう」と話す。
金城さんは「身内以外の人間が、法人でなく個人事業主として事業承継する形は珍しい。新しい形を示せたのでは。ゼロからの起業も大変。事業承継したい人と、島に帰りたい若者や移住者のマッチングを、商工会としてもバックアップしていきたい」と話す。