戦争と平和を題材にしたドキュメンタリー映画「ガザ 素顔の日常」の上映会が4月14日、徳之島・天城町の防災センター(天城町天城)で開催され、約60人の住民らが鑑賞した。
上映会の企画・ナビゲーターを務めた「森と海の藝術楽校」(天城町西阿木名)主宰・のせたかこさんは「奄美群島復帰70周年を経て、今一度平和について考える機会を設けたかった。昨年から現在まででガザでは約3万人が亡くなっている。『ただ普通に暮らしたい』と願うのは私たちと同じ普通の住民。まずは知ることが大切」と話す。
同作品は「世界で最も危険な場所」とされるパレスチナ自治区のガザで、日常を力強く生きる人々の姿を追ったドキュメンタリー(2019年制作)。ガザは種子島と同程度の大きさで、そこに約200万人がひしめき合って暮らしており、約7割が難民で貧困状態。「天井のない監獄」と呼ばれている。約92分の上映時間の中では、砲弾が飛び交う悲惨な状況だけでなく、絶望や怒り、ストレスにまみれた生活の中からも、家族と居られる喜びや、音楽で自分を表現するうれしさ、未来への希望を失わずに生きる人々の姿を伝えている。
漁船の船長になることを夢見る少年や、チェロ演奏で心を保ちながら海外留学を望む女子学生、多種多様な客を乗せるタクシー運転手、2年間拘束された息子を孫と一緒に待ち続けた老人男性など、さまざまな登場人物と、それぞれが抱えるリアルな現状に、会場内では時折すすり泣く声も聞かれた。
上映後には、「戦争はどうしたらなくなると思うか」という問いに対して住民たちが思い思いの意見を画用紙に書き、「希望の樹」と名付けた大きな模造紙に貼り付け、一つの大きな作品を作り上げた。
「希望の樹」について、のせさんは「いろいろな人の意見を共有することで、それを見た誰かが平和につながる行動を取るかもしれない。誰かが何かのアクションを起こす一つのきっかけになり、そこから平和の循環につながっていくことを一つの希望としたい。だから『平和の樹』でなく『希望の樹』」と話す。
同時に「今わたしたちにできることは?」というタイトルの書面を配布。「オンライン署名」「SNSでの発信」「寄付」など具体的な内容が書かれており、「映画を観て終わり」ではなく、そこから個々人がどう平和へとつなげていくかを具体的に考え、行動へとつなげていく工夫も見られた。
「希望の樹」は、5月のゴールデンウイーク前までは天城町役場に設置。その後、防災センターやユイの館で巡回展示する予定。「その場で書き込みが可能なので、映画を見ていない人もぜひ、意見をシェアしてほしい」とSNSで呼びかけている。