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徳之島がつないだ45年ぶりの温かい再会劇 再会の約束までわずか20分

再会の祝杯を挙げる永岡さん(左)と高橋さん(右)

再会の祝杯を挙げる永岡さん(左)と高橋さん(右)

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 徳之島伊仙町在住の永岡和男さん(71)と長野県在住の高橋恒夫さん(63)が、徳之島の地で45年の時を経て再会を果たした。

45年ぶりに肩を並べる2人

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 高橋さんは1980(昭和55)年、大学1年の頃、横浜の大手デパートの配送センターで約1カ月間のアルバイトをしていた。中元の繁忙期で毎日14時間以上同じ倉庫のメンバーと過ごし、そこの責任者が8歳年上の永岡さんだった。面倒見がよく、忙しくて風呂にも入れないアルバイトたちを近くの自宅に連れて行き入浴させてくれることもあったという。歳暮シーズンにも同様に短期間で一緒に働いたが、その後、永岡さんが故郷の徳之島へ戻ることになった。数年間は年賀状のやり取りをしていたが、月日の流れとともにそれも自然となくなっていった。

 時を経て、地元の長野県で暮らしていた高橋さんは2022年、出張で奄美大島へ。そこで離島の魅力にハマり、全国の離島をあちこち巡るようになった。2月、「奄美群島のうち2島を巡ると飛行機代が割引になる」キャンペーンを見つけてすぐに申し込み、行き先は徳之島と沖永良部島にした。その時、永岡さんの顔が浮かんできたが、連絡を取る手段はなかった。

 徳之島旅行の10日ほど前、ダメもとで伊仙町役場にメールで問い合わせた。「70代前後の永岡さんという男性を探している。下の名前は分からない。伊仙町出身。横浜で仕事をしていた。柔道をしていた」覚えている情報はそれくらいで、見つからなくても仕方ないと思いながら自分の連絡先も添えて就寝前に送信した。

 翌朝パソコンを開くと10分前に返信があった。「下の名前が分かれば探せるかも」。やはり難しいか、といったんパソコンを閉じた約10分後に電話が鳴った。出ると「永岡です」と本人からだった。「あまりにも突然で心の準備ができていなかった」と振り返る高橋さん。永岡という名字が伊仙町に数軒しかないこと、役場職員の一人と永岡さんの息子が知人だったことから、すぐにつながったという。人口6,135人(2025年1月現在)の伊仙町で、人探し開始から解決まではわずか20分程度だった。

 9日後の2月27日、高橋さんは無事に徳之島へ到着し、永岡さんと45年ぶりの再会を果たした。年は重ねていたものの、笑顔やしゃべりかたは変わっていなかった。闘牛を見せてもらい、夜は2人をつないだ役場職員も交えて黒糖焼酎を交わし合った。

 永岡さんは「昔は何でも手作業が多く大変だったからこそ人と協力し合い、コミュニケーションを大切にしてきた。だから45年たっても縁が続いているのかも。うれしいこと」と笑顔を見せる。高橋さんは「とにかくいい時間だった。仕事柄、全国さまざまな地域に関わるが、島は特に本来の人間らしさが詰まっていると感じる。人とのつながりが強靱(きょうじん)だからこそ、こうして再会がかなって感謝している。徳之島の大自然はすごかったので、ぜひまた訪れたい」と話していた。

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