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沖永良部島の古民家で戦中戦後の聞き取り報告 鹿大生がちむぐくる継承訴え

発表後に別れを惜しむ学生ら(右2人)と聞き書き相手の太ヨシさん(左から2番目)

発表後に別れを惜しむ学生ら(右2人)と聞き書き相手の太ヨシさん(左から2番目)

 沖永良部島の和泊町歴史民俗資料館(和泊町根折)の屋外展示である古民家で3月1日、同町教育委員会が主催する「戦後80年和泊の戦中・戦後アーカイブプロジェクト」の成果報告会が開かれた。鹿児島大学法文学部2年の佐藤愛梨さんと末川綾乃さんが、聞き取り調査の結果を関係者らに発表。オンラインで同大3年の山本尚昌さんも参加し、質疑応答に対応した。

古民家で発表する様子

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 発表会の副題は「今を生き抜くために和泊の戦争体験者が語る困難な時代を生きるためのメッセージ」。プロジェクトは、戦争体験を保存・継承する目的で、同町委員会と同大法文学部付属「鹿児島の近現代」教育研究センターが連携しながら取り組み、学生らは11月と12月の2回に分けて、地元高校生と聞き取りを行った。

 発表では体験者からの聞き取りを紹介し、食料不足の中でサツマイモ以外にソテツの実などを食べた生活の知恵や、「物がなくても助け合いがあれば生きていける」など、人と人との強いつながりがあったことが報告された。

 学生らは、島の方言で思いやりを意味する「ちむぐくる」の精神に着目。日本のフードロス問題やコミュニティーの分断といった現代の課題に対し、戦中戦後を生き抜いた「命を無駄にしない感覚」「今あるものに感謝する知恵」が解決の糸口になると提案。「未来の世代に、物だけでなく今回学んだ心を残すことが戦争の記憶を伝えるということ」と締めくくる。

 聞き取り調査に協力した前田トヨ子さんは「学生の皆さんが、人間の生き方や社会のあり方をここまで深く考えているとは。涙が出るほど感激した」とたたえる。地元の高校生からも「若い世代はSNSなどがある一方で、人とのつながりが薄いと感じる。趣味や夢などで忙しい人も多いが、大先輩から島について教わる機会があるのはすごくありがたいし、今後も続けてほしい」という声が聞かれた。来年度の事業内容については現在、検討中だという。

 発表を終えた末川さんは「最初は歴史的な話を聞いて記録していくものだと思っていたが、ただ記録するだけだともったいない、これからの生き方や未来に向けて残せるものがあるという価値に気づいた」と活動を振り返り、戦争体験を現代社会に生かすことの意義を改めて強調した。佐藤さんは「現代に足りていない部分が島にはある。プロジェクトを通じて島で頼れる人が増え、また会いに来たいと思えるようになったことが一番うれしい」と笑顔を見せた。

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