沖永良部島の知名町田皆字にある「トラバーチン採石場跡地」で11月30日、地域の歴史や魅力を学ぶ「第2回田皆字巡り」が開催された。
同字の文化や伝統の保存継承に取り組む「たんにゃむにサークル」が主催し、9歳から89歳まで、スタッフを含め75人が参加した。地域の経済を支えた大理石「トラバーチン」の採掘現場を巡り、その歴史や成り立ちに耳を傾けた。
トラバーチンとは石灰分が沈殿してできた大理石で、田皆字では1930(昭和5)年前後から休止期間を経て1973(昭和48)年まで採掘されたといわれる。最盛期には採掘業者からの収入が字の運営費に充てられ、今でも字には「トラバーチン会計」という項目が存在しており、長きにわたり地域の経済を支えた。同字の学校や多目的ホール「あしびの郷・ちな」の記念碑にもトラバーチンが使われている。当日は当時を知る名里武也さんらの説明や古い写真を通し、60年以上前の映画撮影地や、採掘で使う火薬の保管庫跡などを見学し、当時の活気に思いをはせた。
企画に当たり、たんにゃむにサークルは当時の様子を知る数少ない経験者への聞き取りや資料作成に奔走。現場は雑木や雑草に覆われていたため、開催前に地域住民や役場職員などのボランティアによる伐採作業を経て、コースを整備した。足場が危険な場所では消防団員や消防署員ら4人が参加者を見守るなど、安全面にも配慮した。
同サークル代表の田邊ツル子さんは「(準備は)大変だったが、参加者に喜んでもらえてやりがいのあるイベントだった。高齢者が元気なうちに聞き取り、記録をすることも大事。字外からの参加者も多く、田皆字への関心の高さに気付く機会になった」と振り返る。
参加者で古里字在住の朝戸貴子さんは「田皆岬を来島者に連れて来ることはあったが、トラバーチンのトの字も知らなかった。こんなにすてきな石があったとは」と驚きの声を上げた。アンケートでは他にも「田皆に生まれて61年たつが、初めてトラバーチンを巡った」「きれいな音の鳴る石があり、楽しかった」「先人がどれだけ頑張っていたか、とてもよく分かった」などの感想が寄せられ、多くの参加者が地元の知られざる魅力に感動した様子だった。