国際ユースキャンプに参加するためボスニアのサラエボ大学、韓国済州大学、東京大学、鹿児島大学の学生と教員19人が1月28日から6日間、徳之島に滞在した。一行は徳之島を舞台に、バスツアー、講演会、地元小中高校生との交流を通じて、それぞれの国が経験した戦争記憶の伝承について、文化外交を行いながら相互理解を深めた。
徳之島なくさみ館で地元の闘牛と触れ合う参加者たち(伊仙町目手久)
東京大学先端科学技術研究センター・グローバルセキュリティ・宗教分野を母体としたシンクタンク「先端研創発戦略研究オープンラボ(ROLES)」は2023年度からの3年間、外務省の「外交・安全保障調査研究事業費補助金」を獲得。「国際理念と秩序の潮流:日本の安全保障戦略の課題」事業の枠組みの中で、戦争の記憶の伝承について日本と海外で相互理解を深める文化外交を目的とした活動を行っている。
今回は国際ユースキャンプの第1弾。伊仙町と東京オリンピック・パラリンピックホストタウン提携を結ぶボスニア・ヘルツェゴビナ、そして韓国と日本国内の大学生が共に学ぶユースキャンプを徳之島で企画し、奄美返還の歴史を出発点として戦没者慰霊のあり方や戦争の記憶の伝え方、捉え方について、若い世代の国際的相互理解の促進を目指して実施された。
一行は奄美返還の歴史に関するレクチャーを受けた後、犬田布岬にある戦艦大和を旗艦とする特攻艦隊戦士慰霊塔や亀徳にある富山丸・武州丸慰霊碑など島内の慰霊地や先史時代に遡る徳之島の歴史的スポットを巡り、行く先々で地元の人たちとの交流を深めた。サラエボ大学大学院セルマ・アリスバビッチさんによる「紛争復興後の女性たちの役割」、済州大学名誉教授趙誠倫さんによる「済州島の軍用飛行機と戦争の記憶」講演会も開かれ、子どもを産む性である女性こそが担うことができる平和への役割や日本軍が建設し空軍の拠点となったアルトゥル飛行場を巡る平和教育の場としての活用に関して、活発な意見交換が行われた。
最終日には60人以上の地元小中学生と各大学の学生が小グループに分かれ、英語で互いの文化を紹介するなどして楽しんだ。中でも盛り上がったのは東京大学グッズ争奪じゃんけん大会だった。
旧ユーゴスラビア解体に伴い、1995年まで3年半にわたり紛争の地となったボスニア・ヘルツェゴビナを代表して講演会を行ったアリスバビッチさんは「私のこれまでの大学での経験の中でも最も印象に残る体験となった。ボスニア・ヘルツェゴビナの政治運営は難しいものがあるが、国を超えて共有できるものがあると確信した」と語り、国際交流会に参加した亀津中学3年の直島花那さんは「英語や韓国語を当たり前に話す日本の大学生と会って、勉強をすることでいろいろなことができるようになるという意味がよく分かった」と話した。
先端研創発戦略研究オープンラボでは今後も継続して、国際ユースキャンプを徳之島中心に展開していく予定。