沖永良部島の殿智(とぅぬち)神社(知名町上平川)で10月29日、伝統芸能の「上平川の大蛇踊り」が行われた。寺を訪れた美しい娘が小僧をだまして大蛇に化け、最後は僧侶に退治されるという筋書きに沿って祭りは進行。大蛇が火と煙を吹いて宙を舞う様子に見物客は驚きの声を上げた。最後は地域住民らの総踊りで締めくくった。
大蛇踊りは同字に300年以上前から伝わる伝統芸能で、1984(昭和59)年に鹿児島県指定無形民俗文化財に登録された。同神社は大蛇踊りの創始者の幸村政孝を祭る。10メートル以上の3本の柱を組み合わせたやぐらに大蛇をつり下げ、ひもで2方向に引っ張ることで舞うように操る。
見学に来た町田実彰さんは「島生まれだが、数年前に知って初めて見た。想像以上に迫力があった。字の人たちが自ら作っている感じが伝わり、昔の祭らしくていい」と話す。同行事でジューテ(三味線奏者)を務めた、2度目の参加となる波多野雅也さんは「尼崎で三味線教室に通っていた頃、大蛇踊りは上平川字の誇りと師匠や兄弟子から聞いていたので今年も参加できて身が引き締まる思い。歌や三味線に加えて、踊りもできるのが島のジューテ。来年は踊りもできるように勉強したい」と意気込む。
上平川大蛇踊り保存会の西村兼武会長は「2017(平成29)年に沖縄の国立劇場で披露したときに見た人も来てくれたが、『屋外だと開放的に踊っているように見えた』と言われ、なるほどと思った。若者たちが加わってくれることで字に活気が生まれ、一つのむらづくりにつながる」と振り返る。