国指定重要無形民俗文化財に指定されている「与論島の芭蕉布製造技術」を使った芭蕉布の生地入りシャツの1作目が6月17日、完成した。
イトバショウから繊維を取り、糸作り、織り上げるまでを全て手作業で行う芭蕉布製造。与論島で製造が続いているのは菊さん家族が経営する与論島の生活文化資料館「与論民俗村」(与論町東区)のみとなっている。
同施設の菊凛太郎さんは「民俗村では元々、芭蕉布の端切れを使った名刺入れやキーホルダーなどを製作・販売していた。与論町役場職員の一人がそれを見て芭蕉布に興味を持ってくれ、いろいろな製品を芭蕉布を使って作れないかとアイデアを出してくれるようになった。彼からの強い要望があり、今回のシャツ製作に至った」と振り返る。
試作品を兼ねて作った今回のシャツ。白地のシャツの前立て部分とポケットに芭蕉布をあしらったデザイン。菊さんは「1作目は仕事場にもなじむようなデザインをイメージした。次は結婚式に着ていけるような紺色のシャツも欲しい」とほほ笑む。
今回、シャツの縫製を担ったのは与論島内でアロハシャツ製作を手掛ける「bokura beach」。「実際の生地を用いながら対面でコミュニケーションが取れ、スムーズに打ち合わせを進めることができた。今後の製造販売については検討中だが、依頼者のオーダーを受け完全受注生産できる体制を整えたい」と菊さんは意気込む。
シャツのデザインや使う芭蕉布生地の量によって価格は変動する。1万3,200円程度から受注する予定だという。
菊さんは「芭蕉布は与論島の人たちが昔から大事にしてきたものだが、若い世代の中には触ったことすらない人も多い。まずは今風のスタイルに合わせて気軽に手に取ってもらいたい。当時の暮らしや生活を知りたいと思うきっかけになれば」と期待を込める。
与論民俗村の営業時間は9時~18時(各種体験は要予約)。