
徳之島町は山(さん)公民館(徳之島町山)で10月13日、ふるさと納税活用事業として新たな観光地の整備、環境教育、海の環境保全を目的に制作された海底彫刻の完成を祝うオープニングセレモニーが開かれた。
同式典には制作者であるジェイソン・デケアレス・テイラーさん、彫刻のモデルとなった俳優の水原希子さんも参加。テイラーさんは世界初の水中彫刻公園や水中博物館の創設者であり、世界中の海にこれまで1200以上のアート作品を設置してきた。作品は環境に優しい素材を用い、海洋生物が定着できるように設計されており、海中で時間とともにさまざまな変化を重ね、人工礁として多様な生物の新しい生息空間として機能していく。
彫刻の概要について、テイラーさんは「母なる海を象徴するもの。円形状の形は命の循環を意味しているとともに、台風の多いこの地域において波の影響を受けにくい構造になっている」と語り、「彫刻は海と一体となることによって完成する。一度だけでなく時間とともに変化する様子も見てほしい。多くの人が海に興味を持ち、海を好きになるきっかけになれば。人間は自然に多くを依存している。自然が健康な状態でなければ人間にも大きな影響をもたらす」と話し、最後にこのプロジェクトに協力してくれた多くの人に謝意を示した。
続いて行われたトークセッションには、テイラーさん、水原希子さん、高岡秀規町長、とくのしま漁協組合長の徳田進さんが登壇。通訳には、徳之島町で国際協力員として今回のプロジェクトの橋渡しを行ってきたリナルディ・クリストファーさんが参加した。
徳之島の印象について、テイラーさんは「最初に島に来たときは、自国との文化の違いに驚かされ、優しく丁寧で島の文化に誇りを持っていることに感動した」と語り、水原さんは「2022年に初めて徳之島を訪れ、海に潜り、信じられない美しさに魅了された。滞在期間中は毎日、海に行って癒やされた。冬にも訪れ、クジラと一緒に泳ぎ、クジラの奏でるラブソングの音と振動を体感した」と徳之島に魅せられた経験を笑顔で話した。徳田さんは、現在の海の状況について、「地元の海でも海水温の上昇により伊勢エビや夜光貝が減少している。サンゴの白化減少も見られ、生物が生息しにくい状況がある」と説明。高岡町長は「今回のプロジェクトで海に対する考察の機会を得た。先人たちが残してくれた自然をいかに後世に伝えていくか、一人一人が考えていくことが大切。世界自然遺産登録地のある本町の責任でもある」と話した。
その後、彫刻を展示している山漁港に移動して、セレモニー参加者で彫刻を囲み記念撮影を行い、子どもたちが台座にメッセージを書き込んだ。翌日には専用の大型船で徳之島町井之川沖に移動し、海中に設置された。