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徳之島に響く平和の願い 特攻隊員の物語を伝える舞台「流れる雲よ」上演へ

7年前に役作りのために初めて訪れた徳之島で、多くの島の人の優しさに触れ「流れる雲よ」上演を決意した池田恵理さん(提供=池田恵理さん)

7年前に役作りのために初めて訪れた徳之島で、多くの島の人の優しさに触れ「流れる雲よ」上演を決意した池田恵理さん(提供=池田恵理さん)

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 戦後80年を迎えた今年、若き特攻隊員の葛藤を描いた舞台「流れる雲よ」が9月13日・14日の2日間、徳之島の天城町防災センター(天城町天城)で上演される。

訪れた当初、池田さんを温かく迎えてくれた樺島資彦さんの親族と島の人々

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 同舞台は、東京の劇団「アトリエッジ」が26年間にわたり全国各地で上演を続けてきた「鎮魂の」舞台で、この中で大尉の妻役を演じる俳優、池田恵理さんの「大尉のモデルとなった樺島資彦(かばやますけひこ)さんが生まれた徳之島出身で、いつの日か『流れる雲よ』を上演する」という強い決意と、徳之島内外の多くの人々の支援によって、7年の時を経て実現した。

 東京での本公演で、10人以上の特攻隊員が登場する「流れる雲よ」は、実在した多くの若者たちの心情を描き、その思いを受け止めた俳優たちが役に落とし込み、それぞれの「祈り」を織り込んだ作品となり、「観客に深い感動を与えている」という。徳之島公演は、この「流れる雲よ」に地元ミュージカル集団の出演なども含めた特別版として上演する。

 今回の公演で注目されるのが、劇中に登場する後藤大尉のモデル、樺島資彦さんの存在。池田さんが演じるのは、後藤大尉の妻「後藤朝子」役で、大尉の出身地が徳之島であることを知った7年前、そのモデルとなった樺島さんの人生の足跡をたどり、より深く役について理解するために単身、徳之島へ飛んだ。

 役作りのため訪れた当時、島の人々の中には、徳之島と特攻隊の関わりについてあまり知らない人も多く、「恵理ちゃんが来てくれたおかげで勉強になった」「徳之島でもこの舞台をやってほしい」などの声を多く聞いたという。樺島さんの親族からは「(資彦さんは結婚する前に出撃してしまったが)未来にこんなにかわいい奥さんができて良かった」と涙を流されるなど、「深く心に刻まれる経験を徳之島で重ねた」と振り返る。

 俳優としてだけでなくプロデューサーとしても上演実現に向けて行動してきた池田さんは、手書きの遺書や書簡を読み込むため靖国神社(東京都千代田区)へ通い、資彦さんを知る手がかりを訪ねて熊本へ飛び、上演にかかる多額の費用をクラウドファンディングで集めるなどして奮闘してきた。歴史と向き合い、未来への平和のメッセージをつなぐためのここまでの取り組みは、池田さん自身の挑戦でもあった。

 上演翌日の15日には、前里屋敷(伊仙町阿権)で企画展示「樺島資彦さんが残したもの」を開催し、遺書や書簡と共に国民学校教員として残した学級経営案を公開する。25歳で幕を閉じた樺島さんの人生に触れることで過去を振り返り、戦争の意味を改めて考える機会が徳之島に訪れる。

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