
人気ヒップホップグループ「ET-KING」が8月24日、徳之島・伊仙町の「ほーらい館」(伊仙町伊仙)でワンマンライブを開催した。徳之島での単独公演は3年連続で、約300席のホールのチケットは完売。未就学児も入場可能とした今年は子どもから高齢者まで幅広い世代が詰めかけた。
最前列では観客が手を伸ばせば届きそうなほどステージとの距離が近く、観客の中には3歳児が手拍子する姿や、高校生が曲に合わせてタオルを振り回す場面、高齢者が配布されたうちわを掲げながらリズムに乗る様子などが見られ、老若男女が世代を超えて音楽を共有する時間となった。
徳之島をテーマにした曲「ワイドでまいど」では、親指と小指を立てる「ワイドポーズ」を観客も一斉にしながら踊り、アンコールでは「ワイド! ワイド!」という徳之島独特のかけ声がホール全体に響いた。アンコールでも再び同曲を演奏し、島の人々とET-KINGの絆を象徴する場面となった。公演後には「あっという間だった」「また開催してほしい」などの声が多く聞かれた。
ET-KINGと徳之島のつながりが深まったのは、徳之島出身で伊仙町役場に勤める本田哲信(あきのぶ)さんの存在がある。本田さんは大阪の専門学校時代にET-KINGのKLUTCHさん、センコウさん、故イトキンさん、故TENNさんと同級生だった縁から長年メンバーと交流を続けてきた。「いつか徳之島に呼びたい」という思いを胸にし、2022年に伊仙町の夏祭りに出演してもらった。これをきっかけに、その後は町の協力や協賛を得ながらワンマン公演が恒例化してきた。
「離島ゆえ集客には苦労もあるが、島の人に『本物の音楽』に触れてもらえる機会になるのがうれしい。今年は新たな協賛や島外からの来場者もあり、徳之島を知ってもらうきっかけにもなった」と本田さんは話す。
ET-KING滞在中の印象的なエピソードとして、毎年打ち上げで利用する居酒屋のスタッフが、店の準備のため、これまで一度もライブに参加できていないことを知ったメンバーが、今年は打ち上げ中にギター一本で歌を贈り、店主は涙ぐみながら喜んだ場面を挙げる。
メンバーのKLUTCHさんは「今年は未就学児も多く、初めて音楽に触れる子どももいたと思う。これをきっかけに将来の夢や人生の選択肢につながってくれたらうれしい」と述べ、BOOBYさんは「役場の方々や本田さんと再会すると、帰ってきた感覚になる」と島の人との交流を喜んだ。
コシバKENさんは「3年続けて訪れることで、島で僕たちを知ってくれる人が増えたと感じる。徳之島のために作った楽曲『ワイドでまいど』が徳之島行きの飛行機の中で流れていてうれしくなった」と話し、センコウさんは「島の人が『おかえり』と言ってくれたり、音楽に合わせて一緒に踊ってくれたりすることがうれしい。また徳之島に戻ってきたい」と声を弾ませた。
本田さんは「『ワイドでまいど』は島の人たちも参加して作られた曲なので、もっと多くの人に知ってほしい。これからも、このご縁をつなげていければ」と語り、島の人々とアーティストの友情、そして世代を超えた観客の笑顔が交錯する機会の継続への意欲を見せた。