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徳之島・伊仙町で「認知症と共に楽しく生きる」テーマに講演会 映画上映も

映画鑑賞をはじめ多くの聴衆が真剣に聞き入った講演会の様子(提供=伊仙町)

映画鑑賞をはじめ多くの聴衆が真剣に聞き入った講演会の様子(提供=伊仙町)

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 若年性認知症をテーマにした映画「オレンジ・ランプ」の上映会と「認知症と共に楽しく生きる」と題した講演会が7月6日、徳之島交流広場「ほーらい館」(伊仙町伊仙)で開催された。

数多く詰めかけた参加者同士で感想や現状を語り合う場面

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 認知症への理解を深め、共に支え合う温かい地域づくりを目指す同イベント。当日は、ほぼ満席となった。

 上映作品は「オレンジ・ランプ」。39歳で若年性アルツハイマー型認知症と診断された丹野智文さんの実話を基に作られた。自動車のトップ営業マンと して働き盛りだった丹野さんが 、顧客との約束を忘れ、顔も忘れ、自宅への帰り道も分からなくなっていく過程を描いている。絶望の淵に立たされた一人の男性と、男性を支えようと奮闘する家族の日常を描き、「認知症になったら人生終わり」という偏見から「認知症になっても人生は続けられる」という事実を映し出している。

 映画は丹野さんの実体験に沿って忠実に作られており、認知症であることをオープンにすることの意義や、仕事と日常生活を続けるための工夫も随所に描く。「自分でできることは自分でしたい。困った時だけ助けてほしい」というメッセージは「本人からは言い出しにくい」という現実など、当事者目線の内容で展開する。会場では、時に涙する参加者の姿も見られた。

 第2部では、済生会鹿児島病院の黒野明日嗣(あすつぐ)副院長と「きいれ浜田クリニック」の濱田努院長が対談し、第3部は2人が講演を行った。映画鑑賞に始まり昼休みを挟んで長時間にわたった講演会でも席を立つ人は少なく、会場では後から来る来場者へ椅子と机をさらに追加するほど盛況だった。

 講演会では、認知症そのものの理解を深める内容のみならず、認知症になると医療やケアに目が行きがちだが、尊重されるべきは本人の価値観と人生の目的であること。それを「私の希望カード」へ記入するための家族間の会話を始めてほしいと強調した。続く質疑応答では、認知症当事者をケアする参加者が自身の体験と日々の感情を赤裸々に語り、会場は静まり返ったり、笑いが起きたりしたほか、涙ぐみ人の姿も見られた。

 主催スタッフの清原麻由美さんは「映画も講演会も予想を上回る来場者で、これだけ認知症にまつわる困り事を抱えている人が多いと感じた。今日を機会に、きれい事だけではない現実に、明るい気持ちで向き合ってほしい」と話す。

 伊仙町は、徳之島全体で認知症を理解し、支え合い、誰もが笑顔で暮らせる地域を築く「認知症になっても安心して暮らせる温かい町」を目指している。

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