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徳之島の動画配信者がつないだ縁 夫婦で島へ移住、温かい歓迎に感謝の宴

ユーチューブ配信者の丸野さん(左)と秋宗さん夫婦

ユーチューブ配信者の丸野さん(左)と秋宗さん夫婦

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 徳之島に移住した京都出身の秋宗達矢さん・小百合さん夫婦が11月4日、引っ越しの際に世話になった島民を招いて感謝の宴(うたげ)を開いた。

宴では島唄がいくつも披露された

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 移住のきっかけは、島内在住の丸野清さんが運営するユーチューブチャンネル「徳之島テレビ」を視聴したことだった。動画越しの出会いが海を越え、縁もゆかりもない京都の夫婦の心と人生を動かした。

 夫婦が徳之島の存在を知ったのは2024年1月。たまたま視聴した「徳之島テレビ」に映った犬田布岬の光景が、小百合さんが長く描いてきた理想の景色に似ていたことから関心が高まった。それ以降、丸野さんのユーモアあふれる語り口や島民の飾らぬ表情にも魅了され、頻繁に動画を追うようになった。その後、動画の感想を添えて丸野さんへメールを送信。「いつか訪れてみたい」と思いを伝えたが、この時点ではまだ移住は想定していなかったが、旅費を半年かけて準備し、同年10月、初めて2人で島を訪れた。

 実際に島へ足を運ぶと、大自然に心和らぎ「心地よく深呼吸ができた」と2人。丸野さんの案内で向かった先は観光地よりも人々の暮らしの場が中心だった。「3泊4日が2週間に感じるほど濃密な時間だった」と小百合さんは振り返る。島民の人柄や、人口2万人ほどという規模感、病院を含む生活基盤の整い具合など、自然と暮らしの両面に引かれ、帰路には移住の思いが芽生えていたという。

 今年4月の再来島後、京都の自宅売却がトントン拍子に進んだ。縁あって担当した不動産会社の社長が徳之島にルーツを持っていたことも「背中を押された気がした」と2人は振り返る。

 移住後、最初に驚いたのは引っ越しの荷下ろし時の光景だった。来島時に出会った10人近くが駆けつけた。島ではコンテナから運び出された荷物が玄関先で下ろされ、室内への搬入は自力となることが多い。それを知らず「手伝いは不要」と遠慮していた夫婦だったが、「島では当然のこと」と手際よく運び入れる島民の姿に胸を打たれた。その日は差し入れの菓子や食事を持参する人もおり、「島ならではの気配りとおもてなしに助けられた」とも。

 感謝の気持ちを伝えたいと、夫婦は新居でささやかな歓迎の宴を企画した。島の人に教わりながら盛り皿の手配、飲料の冷却、長テーブルの借用など、初めて尽くしの準備を重ねた。

  宴の当日は島民18人が集まり、徳之島の方言で話す島口漫談、島唄の披露、徳之島の名曲「ワイド節」の踊りなど、にぎやかな宴となった。丸野さんは「お二人の気さくさと心配りが会の雰囲気にそのまま表れていた」と話す。

 丸野さんが配信するユーチューブチャンネル「徳之島テレビ」は登録者6440人(2025年11月10日現在)。もともと島の面白い人を紹介する場を作ろうと、2019(平成31)年頃から島内で「ワイドセミナー」を主催してきたが、コロナ禍で中止が続いたため、2021年に動画配信へ移行した。59歳で一からの挑戦となり、撮影や編集は若い世代に学んだ。「徳之島の魅力は人。日常がコンテンツであり、チャンネル開設から4年半以上たった今でもネタはあちこちに転がっていて追いつかないほど」と話す。

 動画をきっかけに実際の移住者が出たのは今回が初めて。「本当に住むとは思わなかった」と驚きつつ、「とてもうれしいこと」とも。「徳之島を思う気持ちは人一倍ある。ユーチューブ発信は苦ではないのでやめようと思ったことは一度もない。これからも続けたい」と意気込む。

 移住後のこれからの生活について、「やりたいことが山ほどある」と話す達矢さんが今、特に関心を寄せるのは米作り。島の人の力と知恵を借りながら「徳之島稲作普及委員会」を今後発足する予定で、島の暮らしを楽しみながら、島の活性化にもつながる活動をしていきたいと意欲を見せる。

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